染色に関連したトラブルの中には、染色加工に使用した薬剤や染料が繊維を損傷させる原因物質になっていることがあります。
今回はその典型例として、硫化染料による綿繊維の脆化破損を紹介します。
監修/クリーニング綜合研究所
ゆかたの柄になっている濃色の葉や枝の柄部分が脆化し、破損した状態。
濃色の柄部分を引っぱると容易に破れる。
濃色の柄部分からは硫酸イオンが検出されたことから、硫酸で綿繊維が脆化したものと推測できる。
染色に使用した硫化染料の構成成分である硫黄が、時間の経過とともに酸化して硫酸を生成し、綿繊維を脆化させたもの。
染料自体が原因となっているため、クリーニングでの防止策はない。
硫化染料を使用しないことが抜本的な対策になる。
硫化染料を使用する場合には、酸中和剤による加工をするなどの対策が求められる。
水に溶けない染料で、硫化ナトリウムで還元することにより水に溶解する化合物とし、繊維に染着させた後、酸化させて元の不溶性の染料を再生する。
主に綿の染色に用いられ、麻、レーヨンなどに使用することもある。
赤と鮮明なブルーを除く黄色から黒までの色相があり、一般に耐光や洗濯の堅ろう度が優れることから、学生服や作業服の染色に多く使われていた。
しかし、鮮明な色相がないことなどから、現在では黒以外の染料はほとんど使われなくなった。
硫化染料は構造中に硫黄を含む結合を持っており、これが空気中の水分や酸素の影響を受けて分解、酸化されて硫酸を生成し、綿繊維などを脆化させる。
特に黒色の染色物には脆化が生じやすい。
染色加工時には、助剤として使用する硫黄の除去や酸中和剤による処理などで、硫酸の生成を抑制するようにしているとのこと。
また、水洗いをこまめに行って生成した硫酸を洗い落とす方法も有効だが、本来、染料として何が使われているかを確認する方法がないため実際的でない。
紺や黒などの濃色の染色品に脆化や損傷が生じた場合、pH試験紙でpHをチェックして3~4の酸性を示せば、硫化染料を使用している製品である可能性を考えてよい。
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