お知らせ

第14回日繊ク協交流会議を開催
「JIS L 0001取扱表示への変更に伴う繊維製品のトラブルの動向」をテーマに
講演・パネルディスカッションを実施

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一般社団法人クリーンライフ協会(髙木健志会長)の事故防止対策部会(市川駿部会長)は、クリーニング産業総合展2024 クリーンライフビジョン21 in Tokyoの会期中である2月14日(水)に第14回日繊ク協交流会議を東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催し、51名が参加しました。
同イベントはクリーニング事故防止を目的に繊維製品の製造からメンテナンスに携わる各業界関係者が一堂に会し課題共有のために開催しています。今回は「JIS L 0001取扱表示への変更に伴う繊維製品のトラブルの動向~JIS L 0001取扱表示の認知度アップ」をテーマに、講演とパネルディスカッションの2部構成で行いました。

第1部の基調講演は、全国クリーニング生活衛生同業組合連合会 クリーニング綜合研究所所長・小野雅啓氏が「ウエットクリーニングによるトラブルの概要報告」をテーマに行いました。

2016年の取扱表示変更以降のウエットクリーニング表示に関する鑑定依頼品の傾向を説明する小野氏

2016年12月に取扱表示がJIS L 0001に変更になった際、商業クリーニングの表示が追加となりウエットクリーニングの記号が新設されました。
「家庭洗濯不可・ウエットクリーニング可」という表示がされた場合にどのような対応をすべきかがクリーニング事業者の懸案事項でしたが、ウエットクリーニング記号の利用推進連絡会が作成したウエットクリーニング記号を表示することの可否を判断するための試験では、ウエットクリーニング記号は日本産業規格(JIS=標準規格)に沿って付けられた記号である以上、すべてのクリーニング事業者が受付・対応できること、仕上げは試験方法に規定された人体プレス等の機器による仕上げのほか、アイロン仕上げについてはクリーニング師の誰でも簡単に仕上げられる一般的な仕上げの程度にすることとしています。
ウエットクリーニングの記号が付けられた繊維製品のクリーニング事故の傾向について、クリーニング綜合研究所によると、取扱表示変更後の2016年12月から2022年7月の間に寄せられた鑑定依頼品のうち、ウエットクリーニングの表示が付けられており、かつウエットクリーニングが行われたものは14件でしたが、ウエットクリーニングの処理そのものに原因があったものや仕上げで回復不可能なものはなく、当初に懸念していたような問題は挙がっていないという結果が報告されました。

第2部のパネルディスカッションは「JIS L 0001取扱表示の認知度の状況と対策」をテーマに行いました。

コーディネーター・パネラー(左から桒原氏、櫻井氏、菅長氏、小野氏、彦阪氏)

消費者庁が2020年に徳島県で行った「洗濯表示の認知度」に関する消費者調査によると、洗濯表示を知っており新しくなったことも知っているのは31.8%で、洗濯表示の理解度クイズの全9問中、平均は2問正解(26.8%)にとどまり、性別で見ると男性は0問正解が最多(32.8%)という結果となっています。
具体的な協議テーマとして「①取扱表示記号がJIS L 0217からJIS L 0001に改正されてからの7年間の状況」について、取扱表示が切り替わって7年が経過した現在でも、アパレル・クリーニング・検査機関の各業界では消費者だけでなく表示を付ける側のアパレルやメンテナンスを行うクリーニングから表示に対する問合せを受けていることが報告されました。
また、取扱表示の認識不足によりクリーニング・家庭洗濯後の製品に生じた変化の実例を紹介しました。

続いて「②表示の認知・理解度をアップさせる」をテーマに、各業界で実施している取組みについて発表しました。
一般的なアパレルメーカーにおいては取扱表示の変更から7年が経過した現在、大きく間違った表示が付けられるケースは少ないですが、アパレル分野に新規参入する企業や小規模のネット販売等では知識不足から間違った表示が見受けられるため、検査機関では問合せや検査依頼時に情報提供に努めていることを紹介しました。
アパレルでは表示責任者としての義務を全うできるよう業界団体による品質管理セミナーの開催や各企業における社員教育を実施するほか、消費者むけにはブランドホームページやECサイトで取扱表示に関する情報を掲載したり、カスタマーサポートへの問合せ時等に情報発信を行うとしました。
クリーニング業界でも一部取扱表示の認識不足が伺えることから、クリーニング師研修の機会や機関誌等を通じた情報提供を行うとし、各業界で連携しながら認知度アップの取組みを推進していくこととしました。

上記は、クリーニング事業者から全ク連に寄せられた取扱表示に関する問合せの例。
1つめの例は、家庭洗濯のタンブル乾燥は禁止だがドライクリーニングにはタンブル乾燥が含まれることが周知されていないケース。
2つめの例は表示者が間違って表示を付けたケース。
3つめはアイロンでスチーム禁止であるにもかかわらずクリーニングでスチームを用いたケース。アイロンは家庭洗濯の表示で業務用のアイロンとは性能が異なるため注意が必要。

第14回日繊ク協交流会議 プログラム

第1部 基調講演
「ウエットクリーニングによるトラブルの概要報告」
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会 クリーニング綜合研究所 所長 小野雅啓氏 

第2部 パネルディスカッション
「JIS L 0001取扱表示の認知度の状況と対策」
パネラー
<アパレル>
株式会社三陽商会 事業本部生産企画部 クオリティコントロール課 菅長小百合氏
株式会社東京ソワール 商品本部 技術部品質管理担当 兼 お客様相談室 櫻井美佳子氏
<クリーニング>
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会 クリーニング綜合研究所 小野雅啓氏
<検査機関>
一般財団法人日本繊維製品品質技術センター 東京試験センター分析チーム 桒原 均美氏
コーディネーター
一般社団法人日本アパレルクオリティセンター 業務部業務課 彦阪博之氏